Introduction
純粋で美しくも残酷な、カネフスキーの少年時代の記憶が生み出した、鮮烈なる衝撃!
『動くな、死ね、甦れ!』から始まる、人生を揺るがす伝説のトリロジーがついに甦る!!
1990年、映画の表舞台に彗星の如く現れた54歳の新人監督、ヴィターリー・カネフスキー。
『動くな、死ね、甦れ!』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人賞)に輝き驚愕のデビューを果たした彼は、その続編『ひとりで生きる』でカンヌ国際映画祭審査員賞受賞。そして3作目となる初のドキュメンタリー『ぼくら、20世紀の子供たち』では、ソ連解体後の混沌としたロシアで社会から弾き出されたストリート・チルドレンたちの生きる姿や心の内をありのままに映し出し、世界に衝撃を与えた。
この3部作は、自身もストリート・チルドレンで不良少年だった監督の経験をもとに撮られたものであり、フランソワ・トリュフォー作品におけるアントワーヌ・ドワネルのように、主人公ワレルカを演じるパーヴェル・ナザーロフと彼の守護天使ガリーヤ/ワーリャを演じるディナーラ・ドルカーロワを追った3部作でもある。
映画と出会った悪童が起こした奇跡は、人生を揺るがす作品として人々の中で生き続ける―。
Director
ヴィターリー・カネフスキー
Vitali Kanevski
1935年生まれ。本名はヴィターリー・エフケニエヴィッチ・カネフスキー。父親はオーケスラの指揮者だったが、第二次大戦中に亡くなる。25歳でモスクワの全ロシア映画大学 (VGIK)に入学するが、在学中に無実の罪で投獄される。服役して4年が経った時、彼はなんとか出獄しようと精神異常のふりをした。医師を納得させるため、医学本にある症状を真似しようとしたが、本にある全ての症状を真似てしまったことで、医学上ありえない症状であると診断され、結局刑務所に送り返されてしまう。8年間の獄中生活の後釈放され、1977年に同校の監督科を卒業してレンフィルム撮影所に入所。短編映画の撮影スタッフや助監督として働く。1981年、『田舎の物語』を監督するが、この作品は内容に納得のいかない脚本を押し付けられて撮ったもので、最終的に彼に無断で改編をされて完成した。以降、長きにわたり、監督をする機会を与えられることはなかった。そして53歳の時にようやくチャンスが巡ってくる。オリジナルの脚本を書き、監督を務め、『動くな、死ね、甦れ!』を完成させる。本作は第43回カンヌ国際映画祭カメラドール(新人賞)を受賞し、カネフスキーの名を世界的に知らしめる。1991年には、その続編となる『ひとりで生きる』で第45回の同映画祭の審査員賞を受賞。1993年、前二作品の主演二人の再会をカメラに収めたドキュメンタリー映画『ぼくら、20世紀の子供たち』を撮り、世界中の映画ファンから熱狂的な支持を受ける。しかしその後、1本のドキュメンタリー映画「KTO Bolche」を残し、映画界から姿を消してしまう。

1981年『田舎の物語』 ―日本未公開―
1989年『動くな、死ね、甦れ!』 ★第43回カンヌ国際映画祭カメラドール受賞
1991年『ひとりで生きる』 ★第45回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
1993年『ぼくら、20世紀の子供たち』 ★第44回べルリン国際映画祭ヤングフォーラム部門正式出品作品
2000年『KTO Bolche』 ―日本未公開―
Line up
動くな、死ね、甦れ! 〈デジタルリマスター版〉
Zamri, umri, voskresni!
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ
1989年/ソビエト/モノクロ/104分
舞台は第二次世界大戦直後、収容所地帯と化したソ連の炭鉱町。大人でさえ自分を守ることで精一杯な世の中を、危うげながらも逞しく生きる12才の少年ワレルカ。彼の引き起こす無垢な、しかし、やってはならない悪さは、母親への反発と相まって次第にエスカレートしていく。そんな彼の前に、守護天使のように現れては、危機を救ってくれる幼馴染の少女ガリーヤ。二人に芽生えた淡い想いは次第に呼応していくが、やがて運命はとんでもない方向へ転じていくのだった…。世界を魅了し続ける少年映画の金字塔。
★第43回カンヌ国際映画祭カメラドール受賞

ひとりで生きる
Une vie indépendante
監督・脚本:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ
1991年/フランス・ロシア/カラー/100分
15才になったワレルカは少年期に別れを告げようとしていたが、大人たちの世界はますます悲劇的な様相を呈し、彼にとって唯一、ガリーヤの妹ワーリャと一緒にいる時だけが心落ち着く時だった。そんな中、ある事件をきっかけに学校を退学になったワレルカは、ワーリャの思いをよそに、ひとりで町を出る。故郷や家族と離れ、ひとりで生きるワレルカ。一方、残されたワーリャは、返事のないワレルカに手紙を送り続け・・・。幼さを見せながら、大人へと成長していく少年の心の風景をスクリーン上で開花させた傑作。
★第45回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞

ぼくら、20世紀の子供たち 〈デジタルリマスター版(日本初公開)〉
Nous, les enfants du XXème siècle
監督:ヴィターリー・カネフスキー
出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ
1993年/フランス/カラー/83分
国際的な評価を得たカネフスキーが次にカメラを向けたのは、社会体制が崩壊したロシアの都市に巣くうストリート・チルドレンたち。窃盗、強奪、売春、そして殺人…残忍性をエスカレートさせていく彼らの裏側に傷つきやすい感受性を見るカネフスキー。やがてカメラは、思わぬ場所でワレルカの面影を残したパーヴェル・ナザーロフの姿を捉える。そして、2本の映画で共演したのち、全く異なる人生を歩み成長していったパーヴェルとディナーラが再会を果たす。デジタルリマスター版を日本初公開!
★第44回べルリン国際映画祭ヤングフォーラム部門正式出品作品
